計画表が一番きれいな日
高校生の頃に文房具屋で買った週間ノートの1ページ目は、今思い出しても自分の人生で一番美しい文書だと思います。朝6時に起きて英単語、午後は数学と古文、15分の休憩を挟んで夜は世界史をやり、23時に寝るところまで書いてあります。教科ごとに4色のマーカーで塗り分けてあり、休憩の欄には小さく湯呑みの絵まで描いてありました。あのノートはおそらく今も実家のどこかに眠っていると思いますが、本当にすばらしい出来でした。
再始動ラボに来る子が見せてくれる計画表も大体あれと似ています。色は3色だったり2色だったりで私より控えめですが、月曜から日曜まで隙間なく埋まっていて、休憩の長さまで分単位で決まっています。見せてくれる本人の顔は晴れやかで、「明日から本気でやります」と言ってくれるので、「分かりました。それで、今日は何をしますか?」と聞くと、そこで一度会話が止まります。
4色マーカーの法則
計画表が一番きれいなのは作った日です。これに例外を知りません。そして計画表が一番きれいな日は一番勉強していない日でもあります。あの月曜日の前夜、私は週間ノートを塗り分けながら、頭の中ではすでに合格していました。合格発表の掲示板の前でどういう顔をするか、母にどの順番で報告するかまで決まっていて、その日は英単語をひとつも覚えていません。計画を立てている時間というのは、不思議なことに、勉強が進んでいる時間と全く同じ充実感があるのです。計画表を眺めている時間に進む勉強の量は、爪が伸びる速さと大体同じです。
塾業界に20年いて延べ数千人の子を見てきまして、学校へ行けなくなった子で、計画表を一度も作ったことがない子にはまだ会ったことがありません。例外なく全員作っています。サボっているのではなく、本人なりに一番真面目なことをした結果が机の上のあの4色です。
3日目の朝に起きること
問題は大抵2-3日目にやってきます。月曜と火曜はどうにかこうにか進み、水曜の朝に寝坊するやいなや、計画表そのものが壊れます。1日分の失敗が1日分の損失で済まず、水曜の分を木曜に回し、木曜の分が金曜にあふれ、金曜の夜には週間ノートが自分を責めてくる文書に変わっているわけです。
で、3日目か4日目に、新しい計画表を書き始めます。これがまた困ったことに、2枚目の計画表は1枚目よりきれいで、3枚目は2枚目よりさらにきれいです。このままいっそ計画表作成の達人になるかと思いきや、4枚目はありません。
満点を取る人はいない
入試で満点を取る受験生はまずいませんし、合格点は満点からだいぶ下にあります。失点を最初から勘定に入れていない人が本番に弱いのであって、裏を返せば、失点を織り込んでトータルの点数で考える人は、ひとつ落としても次の問題を普通に解きます。いつも通りやれば、いつも通りの結果になります。
計画表も同じ作りで、週7日分を全部やる前提の計画表は、満点前提の答案と変わりません。満点前提で1問落とすと答案が壊れるように、全部やる前提で1日落とすと計画表が壊れます。
やらなかった日を先に書いておく
だから、やらなかった日を最初から計画表の中に書いておく必要があります。安心して失点するのと同じ意味で、安心してやらない日を作るということです。
やる気がないからだと言われることもありますが、あの月曜日の私にやる気がなかったとはどうしても思えません。むしろ有り余っていたから7日分も書いたのです。
私の週間ノートは月曜日で止まりましたが、あの月曜日はたしかに1日分の勉強をしていまして、その日の英単語は今も数個覚えています。ちなみに今年の正月に買ったランニング用の時計は、現在、目覚まし時計として大変よく働いています。どこで間違えてしまったのでしょうか。